物語は缶切りだ、というある作家の言葉があります。それそのものに意味があるのではなく、あらゆるものを詰め込んだ読者の心を開くための缶切りに過ぎないのだと。

演劇と観客も同じです。台本と役者も同じです。開かれた心の数だけ答えがあり、新たな物語があります。

ここに1つ台本を用意しました。まだ世界のどこでも上演されてはいません。まだ誰の心にもその景色はありません。これからこの劇をつくる、あなたがたに委ねられています。

この企画では、台本の登場人物に係るあらゆるものが決まっていません。ある3人の人物の、行動だけが描かれています。そのうちの誰かが恋愛関係にあってもいいし、今生随一の友人でもいいし、たまたま袖すりあった見知らぬ人でもいいのです。全てに、その物語は宿ります。

この缶切りで開けたあなたの心を、物語を、どうか聞かせて欲しい。そう思ってこの企画を、ご用意しました。

2019.11